土偶の出土地は広い。
        日本にしかないものと思っていたら大きな間違いなのだ。
          ヨーロッパ・西アジア・インドと世界の広範囲に渡って分布している。
          世界最古の土偶はチェコのドルニ=ヴェストニッツェ遺跡
          という舌を噛みそうな場所で見つかっている。
          今よりさかのぼって2万6千年も前ということだ。
        土偶は、見てのとおり読んでのとおり、土の人形だ。
          ただし、人形といっても女性を象ったものが圧倒的に多い。
          さらに乳房や臀部・腰まわりを強調した造形が多いことから、
          豊穣と多産をもたらす地母神崇拝のあらわれと考えられている。
          また呪術的な要素も担っていた。
        日本の土偶は縄文時代に数多く製作された。
          海外のものと同じく女性的な身体特徴を強調した造形が多い。
          ただ、海外の土偶が農耕社会において出現をみたのに対して、
          日本の縄文時代はご存知のように狩猟採集社会だったということに独自性があり、
          そのため海外のものと同様に扱えないという難しさがある。
        出土の場所、状態も様々であることから、
          装飾品、呪物、玩具、安産護符などと解釈が諸説に分かれている。
          ただし、土偶の状態が破砕した状態で出土する例が最も多く、
          故意に壊されたとしか考えられない状態があることから、
          災厄を払う呪術的な用途として祭祀において使われたとする説もある。
        ちなみにわが国最古の土偶は、三重県の粥見井尻遺跡にて発掘された。
          縄文時代草創期、1万2千年前のものとされる。
          造形は非常に単純で、四肢は簡略化され
          ほとんど確認することができず、頭部は表情を読み取れない。
        ただし、乳房は確認でき、土偶の多くに共通する女性的なるものの
          誇張表現をこの時期から有していることが分かる。